はじめに
一般社団法人みのりサポートから戸根と宇田が、NPO法人そのべる主催の講演会に参加してまいりました。この講演会は、ひきこもり経験の当事者やご家族のための講演会です。講師は同志社大学社会学部教授の木原活信先生をお招きして、約1時間半開催されました。
先生のご講演は多岐に渡るテーマを扱っておられますが、この活動報告では特にみのりサポートの活動に関するひきこもり支援の要点をご紹介し、私たちの活動を今後どのようにしていくべきなのかをお伝えしたいと思います。
ひきこもり支援の現場
まず驚いたのが、ひきこもりになる原因がまだはっきりと分かっていないことでした。木原先生から統計を見せていただくと、いくつか要因が挙げられているのですが、「その他」のカテゴリーが最も多くカウントされていました。そう、わたしたちはひきこもりの原因として何らかの経験を特定しがちですが、まだ実態はよく分かっていないのです。
またひきこもり支援の現場の様子もお知らせくださいました。行政を含め様々な機関が連携してチームを組み、支援を継続しているのですが、根本的な問題として、相談に至らないケースが多いことを先生はご指摘なさいました。
そしてその大きな原因は、ひきこもりの方又はそのご家族への社会の冷たい眼差しです。社会はひきこもりの方に対して怠けている、遊んでいると見做すことで、その方又はご家族は萎縮してしまい、自分たちからヘルプの声を上げにくくなってしまうのです。そのように私たちは学びました。
それではそのような現状を打破するには、どのような改善策があるのでしょうか。先生は私たちにその一つとして、「ひきこもり」に対する考え方の意識改革をご提案くださいました。
「ひきこもり」というと何か現状から脱落した否定的なイメージがつきまといます。そうではなく私たちが「ひきこもり」に対しする考え方を変えて、普通の真面目すぎる人という理解を保持しないといけないのです。
また先生からは、そのようなひきこもりの方に関わる時に、弱さや傷跡をさらけだすことの大切さを学びました。一方的に手を差し伸べるのではなく、相手に信頼してもらい、まずは向こうから心を開いてもらうことが大切です。それには、まずこちら側がどのような弱さを抱えて、どのような苦しい思いをしているかを伝えないといけません。ただ私たちとしても、あえて短所をさらすことは恥ずかしいことですし、相手に確かに伝わるかはわからないことですが、それでもこちらから弱さと傷を見せ、信頼してもらうまで待つしか有効な方法はないのです。
おわりに
私たちみのりサポートは本日の木原先生の講演から多くのことを学びました。まず地域の高齢者支援やお一人で生活困難な方を支援する我々としましては、実際は支援を必要としているのにその声をあげることができない存在がいることを常に念頭に置かないとなりません。
私たち、いわゆる支援をする側は、どうしても支援対象の方を、何かが不足し支援を必要としていると捉えがちです。けれどもこのような姿勢では、本当に支援を必要にしている方に対して一方的な上から目線となり、結果としてそのような方に頼ってもらうのが難しい環境を作ってしまいます。この点を私たちは自戒しなければなりません。
そして支援者でありながら同じ目線で相手と向き合い、良き伴走者となるには、弱さや傷をさらけださないとならないことも、私たちは常に意識しなければなりません。それには私たちの日々の活動の実態、私たちの想い、私たちがいかに困難な状況に向き合いそれを克服しようとしているのかを、しっかりと伝える必要があります。まだ設立して一年も経たない組織ですが、自分たちの限界と時に失敗があることも公正に開示し、その中で出来る限りのサポートを提供し、皆様の信頼を得ていかないといけないと考えました。(戸根)
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